ハヴィガーストの発達課題について
社会的に適応し人格を形成する上で、各発達段階で達成しておくべき社会的・心理的課題のことを発達課題といいます。
アメリカの教育学者であったハヴィガーストが最初に発達課題の概念を提唱しました。
人生の発達段階で次の段階にスムーズに移行できるようにするには、それぞれの発達課題をクリアしていくことで達成できます。
但し、各段階の発達課題を避けて通ったりクリアできなかったりした時は、心身の不調が後の段階で表れる恐れがあります。
その場合、クリアできなかった発達課題に取り組み改善しないといけない場合もあります。
ハヴィガーストは、乳児期・児童初期から高齢期までの6つに人生の段階を区分し、社会的役割や習得するべき身体的技量などを各段階ごとに6~10個ずつ具体的項目として示しました。
この各段階ごとに示された具体的な項目内容は、社会の文化的要請、身体的成熟、個人の価値観や要望の3項目の中のどれかが源泉となっています。
ハヴィガーストが提示した6つの発達段階と課題
発達段階 |
発達課題の内容 |
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高齢期 | 退職と収入の変化への適応 | |
成人中期 | 職業的に満足できる遂行レベルを維持 | |
成人初期 | 幸福な生活を配偶者と営む | |
青年期 | 問題解決や概念に必要な技能・スキルの発達 | |
児童中期 | 良心の発達、道徳観・価値観、男女の適切な性別による役割 | |
乳児期・ 児童初期 |
排泄・話すこと・良し悪しについての学習 |
エリクソンの発達課題について
エリクソンは自我の発達段階と発達課題を「心的・社会的」な観点から捉えようとしました。
この点は、フロイトが自我の発達段階を「心理・性的」観点から捉えようとしたのとは異なります。
ハヴィガーストの発達課題と比較すると、エリクソンが考えた発達課題は、内面的な成長により注視した内容になっており、8つの段階に人生を分けて、その段階ごとの発達課題を下記のように定義しています。
また、それぞれの段階で個人が課題を達成することで、次の段階に進めるとエリクソンは、提示しており、発達課題を達成した場合に得れるものと、発達課題を達成できず失敗した際に生じる心理的問題についても示しています。
エリクソンが提示した8つの発達課題と不達成時の心理的問題
発達段階 | 発達課題の内容 | 課題不達成時 の心理的問題 |
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老年期 | 現在までの人生を振り返り受け入れ統合する | 絶望 | |
成人期 | 若い後継者や自分の子どもを育成することを通じて生殖性を達成する | 停滞 | |
前成人期 | 配偶者・家族・友人との親密な関係を得る | 孤立 | |
青年期 | 将来への見通しを立てるために人生観やアイデンティティ(自我同一性)を確立する | アイデンティティ の混乱 |
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児童期 | 勤勉性を学校生活を通じて獲得する | 劣等感 | |
遊戯期 | 自主性を活動範囲が広がることにより持つ | 罪責感 | |
幼児初期 | 自分でコントロールできる自立性を排泄トレーニングを通じて持つ | 恥・疑惑 | |
乳児期 | 基本的な信頼感を母親との関係を通じて獲得する | 基本的不信 |
ハヴィガーストとエリクソンが提示した発達課題の対比
児童期の発達課題を自我の成熟度という視点から、エリクソンは4点示しています。
また、エリクソンは、青年期の発達課題で「自我同一性の確立」を最重視しています。
発達課題 の提唱者 |
ハヴィガースト | エリクソン |
児童期の発達課題 (就学~身体の発達) |
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青年期の発達課題 (身体の成熟~就職・結婚) |
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自我同一性の獲得 ↑ 達成できない場合・・・ ↓ 同一性の拡散 |